”彼の手元を見てしまったら、誰もが彼の虜になってしまう。”
繊細でいて大胆、澱みなく精錬された1分にも満たない演目に、一体幾つのこだわりが詰め込まれていたのだろう。
インタビューの様子
みなさん、こんにちは!Magish代表のAhanです。
今回は2024年8月に行われたMagishCupガチ部門優勝者のマルチーズ署長に、インタビューをさせていただきました。
実は、前からすごーく個人的に気になっていた人物の一人なんです。笑
なぜ個人的に気になっていたか、それは彼の尋常ならざる”こだわり感”をひしひしと感じていたから。
※一部内容を加筆、修正しております。
深掘り
マルチーズ署長とは何者なのか?
※A=Ahan、M=マルチーズ署長
A.生年月日
M.2004年11月13日です。キムタクと同じですね笑。
A.えっ!?それもうキムタクじゃん笑。いいですねー!
アカウント名の由来はなんですか?
M.アイコンが、マルチーズが押し寄せてきている波なんですよ。タイの画家が描いた富嶽三十六景のパロディなんですけど、その絵を使いたいなぁーって。それでいい名前ないかなーって探してたんですけど、NHKのアニメに出てくるキャラクターにそういうのがいたので、それを引用してマルチーズ署長です。
A.いつマジックを始めたか。またキッカケは何だったのか。
M.始めは父親に見せてもらったのがキッカケですね。
A.それは結構ガチなマジック?
M.いや、そんな本格的っていうほどでもなく、学生の時に覚えてたやつみたいな。それで小学1年生のときに、スーパーの中で【100円が消えるマジック】が売ってたんですよ。それを運動会の帰りに、みんなでスーパーに寄った時におばあちゃんに買ってもらった記憶があります。
ちなみにまだ家にあります!
A.それが1発目のマジックってことですか?
M.そうです。それを初めて人前でやったのが2年生の時なんです。
A.なるほど。でも小学校1年生の時に買って、2年生になるまで続けていたってことですよね?
M.そうですね。そこから2、3個ネタを覚えてそれをずっと使い回してました。中学生くらいまでは。それで中学3年生くらいで、手の大きさもそれなりに成長したから技法やってみようかなって。そこから技法に特化し始めたっていう感じです。
A.マジックから離れてもいいです。得意なことと苦手なことを教えてください。
M.得意なことと苦手なこと...、いつも長所と短所で答えるのが、こだわりが強いっていう部分。逆にこだわりが強すぎっていうのがあるのかなと。
A.それ後で聞こうと思ってました笑。なのでこの質問は飛ばします!
休日は何をしていますか?
M.今はもう勉強ですね。まぁあと、ネットに課金したりゲームしてみたり、トランプいじってみたり、うん、結構しょうもない休日の過ごし方をしてます。笑
A.マジックの練習時間はどれくらいですか?
M.練習するっていう時間はもう取らなくなってて、というのも技法をやり始めて1年くらいでなんとなくこう...体系的な土台というかができたので、それができれば後は知識というか言われたらだいたいできるみたいな。なのでここ最近はまぁちょっとトランプ触ろうかなっていうくらい。練習っていう感じではないですね。
A.マジックは趣味かそれ以上か。
M.趣味ですね。
A.彼女もしくはパートナーはいますか?
M.いません!(喰い気味)
A.よかったwww 仲間だwww
深掘り
こだわりの一片を見る
↑MagishCup投稿作品↑
A.僕からみたマルチーズさんの姿なんですが、物事の理解度、解像度の高さ、単語や文脈の理解度が人一倍強い人だと思ってます。おそらくこだわりがあるのがそれらに繋がっているいるんだと思います。
物事の捉え方の深さ、言葉や文章の理解が深いことの良さや、またそれらを真に捉える強さも知っている。そんな人だと思ってすごくトンチキな質問をします。笑
カレー味のう○ことう○こ味のカレーどっちがいいですか?www
M.えー...すーごいトンチキな笑。うーん、まぁ、カレーですかね。ちゃんとした笑
A.う○こ味のカレーか。理由を聞いてもいいですか?
M.そう、ですね...。食べたことが無いっていうのが大前提であるんですけど。そもそも排泄物の時点で、人間に不要な物であり、汚いものとして出してるわけじゃないですか。だから摂取すること自体が間違ってる。となったときに、食べるとしたら味は分からないけど、健康面を考えてカレーでしょって。笑
A.う○こ味のカレーということですね。では反対側に立って、カレー味のう○こを肯定してください。
M. ...、え。...無事に美味しくは食べれるので...、美味しいくらいしか出てこないです。笑
A. いいねーwww めちゃくちゃトンチキな質問でした。笑
M.めっちゃ浅い回答になってしまいました。笑
A.いや、めちゃくちゃいいです!笑
では、世の中で好きな言葉はありますか?
M.結構いっぱいありますよ。まぁ、でもそうですね、【人事を尽くして天命を待つ】あとは、【災い転じて福となす】それから、【子曰く、内に省みて疚しからざれば、夫れ何をか憂え何をか懼れんと。】
全体的に父の受け売りなんですけど、この3つとか好きですね。やれることはきちんとやって結果を待とうとか、悪いことがあったら良いこともあるよとか、正直に生きていれば何もやましいことはないよねっていう意味です。
A.なるほど。やっぱりすごいなー。「好きな言葉はありますか?」って聞かれたら世の中の9割くらいは「なんだろうなぁ」とか「特に無い」だと思うんですよ。
その中で「好きな言葉はありますか?」っていう質問に「いっぱいあります。」って答える部分にマルチーズらしさがあるなー、って感じましたね。
好きなキャッチコピーはありますか?
M.あんまりキャッチコピーで意識したことはないんですけど、良いなぁと思ったのは、ティファニーの【ひとりでも生きていけるふたりが、それでも一緒にいるのが夫婦だと思う。】っていう言葉があったんですけど、それなりに的を得ているなっと。
A.今の時代にあったキャッチコピーですね。
M.結婚しなくても幸せになれるみたいな感じですよね。
A.今回のMagishCupに投稿した1本目の動画のこだわりポイントを教えてください。
M.全体的な動きの統一とか整合性は保ちつつ、いかに無駄に難しいことができるのかっていうことですね。嫌ほど技法ばっかりをとりあえず詰め込んでみました。
ただ、技法はつぎ込んだけど、全体としてはまとまっていることをイメージして構成しました。
A.個人的に絶妙だと感じたのが、手を被せてカードが変わる瞬間です。カードが見えている状態なのに変わった瞬間が分からない、ちょっとエ○いって思いました。笑
M.あー、たぶん同じダイヤのカードだったからかもしれないですね。本来のアードネスチェンジではないやつでやってみました。
深掘り
”こだわる”に至るまで
A.こだわるようにしようと思ったのか、気づいたらこだわる人間になっていたのか。
M.僕的には自然にというか、そういう人間になってたですね。ハマったらそれに没頭するっていうのが元からで、親に聞いてみたらどうやら小さい頃からそうだったらしいんですよ。
A.なるほど。おそらくどこかのタイミングで”周りと比べてこだわるタイプ”っていうのに気づいたと思うんですが、それに気づくキッカケは何でしたか?
M.周りとあんまり合わなかったってことですかね。「なんでもうちょっと調べへんのやろ。」っていうことがメチャクチャあって。もっと自分ならこうなのになぁとか。ググったら今ならいくらでも出てくるのに、1つの情報にけっこう、流されてるっていうと
あれですけど、体型化された情報のみを鵜呑みにしている人が多いなって。
そのー、一辺倒な考え方ってあんまり良くないじゃないですか。そこで人と合わない部分があって。
A.こだわりの強さや理解度の高さの良い点と悪い点
M.周りの感覚と若干ずれてしまう。取り入れてる情報が多い分、周りがそっちが正しいと言っている中で、逆張りしているような状態になることがありますね。なんか周りと違う感じがデメリットとしてあります。
ただメリットとしては自分なりの考えが広がるのと、常に本質を捉えようと心がけることでメチャクチャな損をするっていうことがないっていう感じですかね。
A.すごく分かります。物事の本質を捉えるっていうのは難しいことではあるけど、だからって本質を捉えようとしない人とは、なんか...、仲良くできそうにないと思ってしまうwww
M.人間としての深みっていうのが足りないというか。笑
A.いわゆる”上手じゃないマジシャン”というのは、マジックの解像度が低いと思いますか?
M.んー、解像度がまだ低い状態なのかなとは思います。でも僕自身が高いとも言えないんですけど。例えばその技法が作られた理由とか、バックグランドみたいなのも全て理解して技法を使っているかと言われればそうではなくて。
でも、みんな大体自分がいいと思った使い方をするじゃないですか。その中でもしかしたら「その使い方違うんじゃないか。」っていうのはあるんじゃないかなとは思います。
例えばダブルリフトとかって、なんとなく使い方は分かるじゃないですか。でもそこで本質を理解していないってなると、例えばすごい不自然な流れとかだとそもそも2枚であることが悟られてしまう、みたいな部分はある。
注力すべき部分というか、もちろん練習過程なので仕方ないところではあるんですけど、たまーにですけど、ベクトルを間違えてるというか、ミスってるみたいな惜しい人はいるかもしれないですね。
A.マルチーズの裏の顔が見たくて少し変な質問をしてみました。笑
では今こだわりがあるものと、こだわりがないものってなんですか?
M.こだわりがあること...、興味があることしか基本しないですね。なので身の回りにあるものでこだわってないものは無いですね。そしてこだわりがないものは、そもそも興味がないものですね。
A.ほーなるほど。
M.けっこう大量に趣味があるので、若干ですけど器用貧乏気質なんですよね。いろいろ手を出しすぎて、でも結局手が回り切らない部分もあるんですけど。まぁ、基本はこだわりを持ってやってますね。
A.例えばオシャレとかにもこだわりますか?
M.んー、まぁ一応こだわりを持ってるつもりですけど、学生なので、それなりにっていう感じです。
A.お部屋のインテリアとかもこだわりますか?
M.まぁ、金銭的にちょっと笑。妥協はあります。
A.今こだわっているランキング1位、2位、3位にマジックは入ってきますか?
M.んー、マジックが実質的には入ってくるかもしれないですね。まぁでも基本的に自分ができる範囲でこだわりを持ちたいっていうのはあるので。例えばですけど”衣食住”であれば”住”にはこだわれないんですよ。学生なので。その分衣と食に若干こだわりが入る。そういう感じで出来きれない部分があるので、実質的にマジックが入ってくるのかなぁと。
A.じゃ本当に身の回りのことは基本的にこだわりたいってう感じなんですね。
M.そうですね。気になってしまうんですよね。「これでいいのか」っていうか、もうちょっと調べておくかみたいな。自分なりの理論というか、理解を深めておくというかみたいなのを常にしたいっていうのはありますね。
なんか、すごいしょうもない、ろくでもない大人になりそうって危惧してます。笑
A.いや、そのままでいいんじゃないかな。お世辞無しで、そのままでいい大人になりそうな気がします。
では最後の質問になります。こだわるとは何か。理解度が高いとは何か。
M. ...こだわるということ自体、その人がこだわっていたらこだわりを持っているということになるじゃないですか?僕から見たらこだわりを持っていない人でも、その人なりのこだわりを持っている。つまり人から押し付けられるものではない。
その上で理解度が高いっていうのは、その物事をその人なりに咀嚼できているっていうか理解している状態。議論に帰着させた上で解像度を上げて、その上それに固執せずにさらに考えていられるかっていうのですかね。自分の考えに固執している人の方が理解していないと思っているんで。
何にも考えてない人と、理解した自分の考えに固執する人と、理解した上で反芻できる人でいうと、やっぱり柔軟に物事を考えれる人の方が強いです。何にも考えてない人は感覚の世界ですし、絶対っていうのは数学とか物理の世界でしかないじゃないですか。それでいくと感覚派の方が個人的にまだマシだなと。
A.では最後にこちらの記事を読んだ人に一言お願いします。
M.そうですね、一言か...、まぁ、マジックという文化が広がればいいなぁくらいには思ってるんですけど。そのためにはまず分母を増やさないといけないと思ってて。量と質ってトレードオフだと思うんですけど、最初は量を取らないと質って上がらないと思うので、まずは量を増やしたいなと。質は一旦置いておいて、若手のマジシャンたちを増やす。
まぁこれは、ちっちゃい頃の僕に言いたいんですけど、「考えるな、行動しろ。」っていう感じですかね。未知数なことはやってみなきゃ分からない。考えながら行動してもいいですし、とりあえず考えて考えてやっていく。分からないことは分からないまま一旦やってみようぜ。
マルチーズ署長
Comments